就労調整103万円の壁の誤解 11月2023-社労士-

 103万円の壁とは

巷に広く知れ渡っている“103万円の壁”という言葉。

パート勤務して家計を補助している人が年収103万円を超えると何かタイヘンな事になる!?と信じられているようですが、その情報は正しいのでしょうか?

103万円の意味

そもそも103万円とは、どこから出てきた金額なのでしょうか?

まず、103万円とは給与の年額、いわゆる年収を指します。
今、パート勤務で年収103万円(月額8.5万円程度)の人がいたとします。
その人のその年の所得税の計算は、
103万円―55万円(給与所得控除額)=48万円・・・給与所得
48万円(給与所得)―48万円(基礎控除額)=0円・・課税所得
となり、課税所得がゼロなので所得税額もゼロとなります。

つまり103万円とは、本人に所得税がかからないMaxの給与年収です。

では、この壁を超えると何かタイヘンな事が起こるのでしょうか?

103万円前後の本人の税金比較

さてこれを見てどう考えるでしょうか。
本人の税金は、年収103万円を超えたとたんにオオゴトになっているでしょうか?

住民税均等割さえもゼロになる年収は965,000円までです(愛媛県松山市)。
そして住民税所得割(10%)がかからない年収というなら100万円までです(愛媛県松山市)。
また「年収は増えるが手取額は減る」などということも起こっていません。
何かが大きく変わるラインは、103万円ではないようです。

本人でなく夫などの税金が高くなる?

ではなぜ「103万円!103万円!」と皆が気にしているのでしょうか?

パート勤務の自分でなく、もっと稼いでいる夫などの税金が高くなるから・・と思っているなら、それは昔(5年以上前まで)の話です。

現在は、たとえば夫が一般的な所得の場合、妻のパート年収が103万円を超えても150万円までなら配偶者控除と同額の配偶者特別控除38万円が設けられており、妻の年収が103万円を超えたからと言って夫の税額がいきなり増える事はありません。(年収150万円までは全く影響無し、150万円を超えても約201万円までは何がしかの配偶者特別控除あり)

ただし130万円の社保の扶養のライン(いわゆる130万円の壁)には注意が必要かもしれません。

思い込みによる就労調整

これから年末にかけて、さらなる人手不足が心配・・という事業所において、パート従業員から「扶養の範囲で103万円までしか働けない」と言われた時には、超えると本当に問題があるのか、確認してみるのがよいでしょう。

唯一、103万円を死守する意味があるケースとしては、夫などの勤務先から103万円基準で家族(扶養)手当が出ている場合があります。家族手当は年十数万円程度となるため、それが無くなると家計への影響は大きいと思われます。その場合は、103万円の壁を意識せざるをえないかもしれません。

けれども「自分に所得税がかかるから」「夫の税金が高くなるから」という単なるイメージや誤った情報に左右されて、ほとんど意味のない就労調整をしている人も多いようです。所得税がかかると言ってもごく少額であり、配偶者の税金へは実質ほとんどの人は影響しないことを知れば、103万円を超えて働く人が増え、労使ともに無理なく人手不足が解消される可能性があります。

後日トラブルにならないか心配な場合等は、社労士or税理士へ相談するとよいでしょう。

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