甲・乙・丙欄と年末調整 12月2023-税理士-
年末調整できる?できない?
今年も年末調整を行う月、12月となりました。
会社等では、従業員等のうち年末調整対象者へ用紙を配付し、必要書類を添付しての提出期限を11月末頃としていたのではないでしょうか。
年末調整対象者とは、ざっくり言うと、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)を提出している人(当社がメインの勤務先である甲欄適用者)で、高額給与(2,000万円超)をもらっているヒト以外の人です。
時々、対象者が「ワタシは自分で確定申告するので年末調整はしないで下さい」と言ってくることがあるようですが、そのような選択は想定されておらず、確定申告するとしても、対象者であればいったんは年末調整で年税額の精算をすることとされています。
ただし実務では、対象者=年末調整する人(というかできる人)ではありません。
対象者にも、できる人とできない人があります。
どういうことでしょうか?
対象者なのに年末調整できない?
さて“年末調整対象者(年末調整すべき従業員)であっても、コレが無ければ年末調整できない”というものがあります。一体何でしょうか?
それは、いわゆる前職(甲欄)がある人(転職してきた人)の前職分の源泉徴収票です。
なぜなら、前職分の源泉徴収票が無ければ、年末調整をするために必要な給与収入(今年1月1日から12月31日までの主たる給与の合算額。前職分+当社分)が計算できないため、年末調整したくても、そもそもそのスタート地点に立てないからです。
他の添付書類(生命保険料控除証明書やイデコの掛金証明書など)は、あれば年末調整で控除ができる(来年、本人が確定申告する時に控除するのも自由)というものなので、提出漏れがあっても、それにより年末調整ができなくなる、などという事は起こりません。
多様な働き方と源泉徴収区分(甲・乙・丙欄)
昨今は、雇用されて働く場合でも、単発or短期のアルバイト、掛け持ちのパート、週末だけ副業など、さまざまな働き方があり、源泉徴収のされ方(甲・乙・丙欄どれが適用されるか)も複雑です。
従業員一人について見ても、例えば当社に入社した当初は短期のバイトで丙欄適用者だったが、もう少し続けてもらうことになり、その時点では別の会社がメインの勤務先だったため乙欄を適用していた、その後、別の会社よりも当社の方がメインになったので甲欄を適用することとなり年末に至る、などという事もあるかもしれません。
例えばこの人の場合、マル扶提出済みのはずなので年末調整対象者になりますが、さて、年末調整において合算すべき給与は何か?わかるでしょうか。
答えは“当社から支給した給与すべて(丙・乙・甲)と、別の会社がメインだった時点までの、別の会社から支給された給与”です。
乙欄や丙欄の給与は年末調整しない、というのは、「その後に甲欄の給与が絡まないのであれば」という条件付きだと考えれば、処理を誤らないように思います。
実務では前職の源泉徴収票どおりに処理
実務においては、中途入社の人に、まずは前職の有無を確認し、前職があれば源泉徴収票を入手し、その表記に従って処理する手順になるでしょう。
もし前職(甲欄)の源泉徴収票が入手できなければ、そして何か他の証憑(給与明細など給与総額と源泉徴収税額等が確認できるもの)もなければ、残念ながら、年末調整すべきだができない人となり、年末調整未済の源泉徴収票を交付せざるをえないこととなります。
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