令和5年分の年末調整 11月2023-税理士-
税制改正の影響は限定的
そろそろ従業員等へ年末調整関係書類(給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)、保険料控除申告書(マル保)、基礎控除兼配偶者控除等兼所得金額調整控除申告書(基・配・所))を書き方案内等とともに配布する時期となりました。
今回(令和5年分)の年末調整は、税制改正により前年までと変わる部分はありますが、改正の対象は限定的で、従業員等の全員に関係するようなものではありません。
けれども経理担当者等としては、該当者がいれば対応&チェックをしなければなりません。また、目新しい記入欄について質問を受けることがあるかもしれません。
改正内容を大まかにでも把握しておけば、年末の繁忙期に向けて余裕を持って業務にあたる事が出来るのではないでしょうか。
改正内容
改正により今回(令和5年分)の年末調整で初めて目にする内容として、以下の2つが挙げられます。2つとも給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(いわゆるマル扶)の項目です。
①非居住者である扶養親族の制限
前回(令和4年分)までは無かった、非居住者である親族についての4区分のチェックボックスがあり、該当者がいる場合には、いずれかにチェックを入れるようになっています。
改正って何か?というと『前回までは扶養に入れている親族が非居住者(海外に住んでいる等)の場合、親族であることの証明(戸籍等)と扶養していることの証明(送金履歴等)を示せば、日本での所得が48万円以下なら年齢にかかわらず扶養控除OKだったが、国外所得はフリーパス!というのもバランスが悪く問題とされたため、ちょっと厳しくします』というものです。
よってそもそも扶養に入れている親族が皆日本に住んでいれば、全く関係のない改正です。
「いや、自分には関係ある」という人の場合、ちょっと厳しくって何か?というと『その親族が働き盛りの年齢層(30才~69才)の場合は原則NG、ただし30才~69才であっても事情によってはOK』となりました。
そしてそのOKとなる事情は、チェックボックスの“留学or障害者or年38万円以上の生活費等送金”のいずれかに限定されています。
またチェックボックスにチェックを入れて扶養親族とする場合には、その事情を証明する書類等(ビザや年38万円以上の送金履歴等)も追加で必要になります。
②退職手当のある配偶者等の記載欄が追加
マル扶の一番下“住民税に関する事項”に新しい記載欄が追加されました。
まず、ここへは誰を記入するのか?というと『退職所得があったがために所得オーバーしてしまい、マル扶や基・配・所へは氏名を記入できない(扶養・配偶者控除等がNG)こととなった人』です。『退職所得を含めなければ、配偶者なら所得133万円以下、扶養親族なら所得48万円以下の人』ということです。
NGなのになぜ記入するのか?というと、NGなのは所得税の話で、住民税では退職所得は無視なので控除可能(というか控除すべき)だからです。
前回(令和4年分)までは、該当者は年末調整後、個別に住民税の申告をして控除を受けるしかなく、適用漏れが散見されたため、年末調整で対応するべく改正が行われたようです。
これも、そもそも従業員等の配偶者や扶養親族に退職所得がなければ、全く関係のない改正です。
改正以外もやはり煩雑な年末調整
マル扶、マル保、基・配・所への記入は、一般の従業員等にはかなりハードルが高いと思われます。
ですが、経理担当者等がすべてを説明しようとしても無理があります。
マイナポータル経由で・・・といってもまだ実務でサクサク使えるレベルには達していないようです。
個別の疑問が生じたら、税理士等へ相談するのが効率的かもしれません。
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