定額減税のツボ 4月2024-税理士-
令和6年6月支給分から給与計算実務に影響
令和6年度税制改正により、居住者(日本に居住等の人)に対して一人4万円(所得税3万円、住民税1万円)の定額減税がされることとなりました。
給与所得者(従業員等)の定額減税は、本人分だけでなく要件を満たす配偶者や扶養親族分についても、本人の給与を通じて行うこととなります。
つまり給与計算の事務負担が増大するということです。
一体どのようなしくみになっているのでしょうか?
住民税の定額減税計算は市町村担当
住民税については、市町村において計算されます。
よって会社等は、届いた特別徴収税額通知書の金額(定額減税織り込み済)を各月に天引徴収し、翌月納付するだけです(従前どおり)。
所得税の定額減税は給与計算で
所得税の定額減税実務は煩雑です。
理由は、“ポンと給付”なら一度でスッキリ完了するものを、給与所得者(従業員等)については令和6年分給与の源泉徴収税額を調整(各従業員によって異なる定額減税額に達するまでは源泉徴収をストップ)することで減税を実現させるしくみだからです。
何てややこしい・・・しかし残念ながら選択制ではないため、会社等としては対応せざるをえません。
知っておくべきポイント
経理・給与計算担当者が実務にあたるとき、ツボがわかっていれば少しだけ負担が減るかもしれません。
主なポイントは、対象者はだれか(どの従業員等か)、源泉控除対象配偶者と同一生計配偶者の違い、カウントする扶養親族の範囲あたりかと思われます。
対象従業員(本人)
給与を通じて減税すべき人は、従業員全員ではありません。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(いわゆるマル扶)を提出していて、令和6年6月1日に在職(勤務)している人についてだけ、給与計算において源泉徴収税額を調整していくことととされています。
つまり乙欄・丙欄適用者は関係なく、また5月末までに退職した人や6月2日以降に入社した人も関係ありません(源泉徴収税額の調整不要)。
同一生計配偶者
マル扶の源泉控除対象配偶者欄に記入があっても、その全員がカウントされる配偶者とは限らないので注意が必要です。
「令和6年中の所得の見積額」欄をチェックし、48万円超(給与収入のみならいわゆる103万円超)であれば、定額減税においては人数にカウントできません。
「所得」の理解がアヤシイ時などは、必要に応じて本人へ再確認しておくと安心です。
扶養親族
マル扶の「控除対象扶養親族」だけでなく、下部に記入してある「16歳未満の扶養親族」(いわゆる年少扶養親族)も、定額減税においてはカウントします。
見落とさないよう注意が必要です。
高額所得者の場合
本人が、たとえば役員などで給与収入2,000万円超の場合、年末調整はしませんが、給与を通じての定額減税は行うこととされています。最終的には本人の所得制限により定額減税制度の対象外(減税なし)となるのですが、カウントすべき扶養親族分は、本人の給与を通じていったん定額減税が実現されます。
この場合、高額所得者の配偶者ゆえにマル扶へ配偶者の記載がされておらず、カウント漏れになるケースが想定されます。
このままでも給与収入2,000万円以下なら最終的には本人の年末調整において控除できるため支障はありませんが、配偶者の所得が48万円以下であれば、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」なるものを事前に(5月末までくらいに)提出してもらえば配偶者分の定額減税を給与計算で行うことができるので、案内してあげると喜ばれるかもしれません。
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