令和6年分の記帳と証憑管理 5月2024-税理士-
令和5年分までと同じで大丈夫?
令和6年もすでに4ヶ月経過しました。
現在はクラウド会計も普及しており、預金取引やカード払いについては、入力不要でサクッと連携取込して処理している方も多いかと思います。
ところで、令和5年10月1日からインボイス制度が開始し、さらに令和6年1月1日からは電子帳簿保存法のうち電子取引データ保存制度がすべての事業者に義務付けられました。
よって、今年からの記帳(会計ソフトへの入力など)や証憑管理(請求書・領収書等の保管方法など)は、去年までと同じというワケにはいかない部分があります。
具体的には、消費税申告を行う事業者であれば、原則、インボイスを意識した記帳をすることとなります。また、すべての事業者は、電子取引があれば、その電子取引データの保存をしなければなりません。
記帳におけるインボイスへの対応
実務において、記帳(入力等)する時に必須の支払関係証憑(請求書・領収書等)。
インボイス制度が開始されたので、すべての支払について、インボイスか否か(登録番号の記載があるか無いか)チェックしなければならないのでしょうか?
そんなことはありません。
理由は、いくつかの特例などがあるからです。たとえば・・・
①少額特例
「税込1万円未満の支払については、インボイス無しで仕入税額控除OK」という特例です。
よって、金額が1万円未満ならインボイスかどうかのチェックは不要です。
会計ソフト入力時は、インボイスでない証憑でも「適格」等とメニューで選択するなどして計算に反映させます。
基準期間(個人事業者なら2年前)の課税売上高が1億円超の事業者は使えない場合がある事と、令和11年9月30日までの時限措置であることに注意が必要です。
②公共交通機関特例
「税込3万円未満の公共交通機関(船、バス、鉄道)の運賃はインボイス無しで仕入税額控除OK」という特例です。摘要欄へ「公共交通機関特例」等と入力が必要です。
この他にも自動販売機特例、郵便局特例などいくつかの特例があります。少額特例が使えないケースで該当があれば、使う機会があるかもしれません。
③8割(5割)控除の経過措置
①・②の特例が使えなければ、受取った証憑がインボイスなのか否かをチェックする必要があります。
けれどもインボイスでなければ全く仕入税額控除できないかというと、いきなりそのような事にはならず、当面3年間は8割は仕入税額控除OKなので、会計ソフト入力時は、インボイスでない証憑は「区分記載」等とメニューで選択するなどしてインボイスとは分けて管理することとなります(その後3年間は5割控除)。
国税庁ホームページのYouTube
わかりやすいかは人それぞれかもしれませんが“3分でわかるインボイス”で検索すると、「3分でわかるインボイスETC対応」「3分でわかるインボイス立替金精算」「3分でわかる銀行振込手数料のインボイス対応」などのYouTube動画が見られます。
電子取引データの保存義務
事業者が請求書や領収書等を電子メール添付のPDFファイルで送受信したり、インターネットのホームページから、たとえばクレジットカード利用明細書PDFファイルをダウンロードして入手するなど、そもそも紙ではなく電子データで受取るものがあれば、それは電子取引であり、すべての事業者はそのデータを各自保存しておかなければなりません。
インボイスは逃げ道もあるが2割特例は期限あり
事業者の過去の売上高などによっては逃げられないケースもありますが“インボイス登録しなければずっと免税事業者だった”などの場合には2割特例が使えたり、2割特例が使えなくても期限内に簡易課税選択届を出すことで簡易課税での計算ができる場合があります。
ただし2割特例は令和8年分までの特例です(令和9年分以降は使えない)。
ケースバイケースなので個別相談を
売上規模や業態などによっては、インボイスに苦しまなくてもよいケースも想定されます。
「よくわからないままインボイス登録したが不要だった・・」ならば、すぐというワケにはいきませんが、やめることもできます。また「明らかに簡易課税が有利」で選択可能な売上規模であれば、選択届出書を提出することで経費のインボイス管理から解放されます。
ただし消費税の届出やインボイスは複雑なので、本当にそうなのか(不要なのかや有利なのか等)の判断は、自分だけで行うのではなく、複数の相談先(税理士等)へ個別相談することをお勧めします。
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