就業規則 2月2025-社労士-

就業規則作成の現状

“就業規則”と言うと「労働者(正社員、パート、バイト含)10人以上の事業場で作成し、労働基準監督署に届出しなければならない書類」で「10人以上なのに作成・届出していないと労働基準法第89条違反で罰則(30万円以下の罰金)あり」とは一応、知られているかもしれません。

就業規則は、その会社等の全労働者に適用されるローカル・ルールです。
そして会社等が労働条件や守るべき規律を定めて書面にし、労働者に周知することで法的効力を持つため、労使間のトラブル防止にも役立つと言われています。

ですが現実には、本当の意味で有益な、その事業場に合ったオリジナルな就業規則を作成している会社等は多くないように見受けられます。たとえば過去に何かしらの助成金申請などの添付書類として必要だったので、社労士等へ依頼して標準モデル的な就業規則をとりあえず作成し、その後はあまり意識せず保管しているだけ・・という事もあるようです。
ちなみに10人未満だと作成禁止というわけではありません(義務はないというだけ)。

あいまいなままの方がよい?

そして、就業規則を作っていないor作っているが周知していない事業場も、まだまだ多いようです。その理由としてよくある主張は・・
・作らなくても、労働基準法の最低賃金とか割増残業代とかは一応守っているから支障ないのでは?
・年次有給休暇とか育児・介護休業とか、法令の定めは知っているが、できれば休ませたくないので周知したくない
・何かあった時には、人によって取扱いを変えたいので、画一的なルールは邪魔
などなど、ざっくりまとめると「あいまいなままにしておきたい、その方が都合がよいから」という事のようです。
ですが、本当にそれで大丈夫でしょうか?

突発的な事態の想定

毎日、全労働者が模範的な態度で働き、ケガや病気をすることもなく、家族もいつまでも元気であれば理想的ですが、人間である以上、何かしら問題をかかえる事もありえます。そして何か突発的な事が起こった時、就業規則に何も定めがないと職場は混乱し、困った状況になるかもしれません。突発的な事とは、たとえば・・
・身体のケガや病気でしばらく働けない
・メンタル不調で欠勤と出勤を繰り返す
・勤務態度の悪化(無断欠勤が続く、命令違反、職務怠慢、不正など)
などなどです。

就業規則&周知の有無と対応の可否

上記のような事態に対して、就業規則に定めがあれば、たとえば
・一定期間休職させて様子見、期間満了後、復職が無理なら(解雇でなく)自然退職
・休職期間は通算することや、医師の診断を取り入れること
・掲げた重大な事由に該当すれば(普通解雇でなく)懲戒解雇
などの対応をとることが可能です。

しかし就業規則がなかったり、作成していても周知していなければ、会社等と労働者との間で意見がくい違い、その結果さまざまなトラブルが発生するかもしれません。
上記の例で言えば、就業規則の定めなしに欠勤が続くことを理由に退職させれば“解雇”となります。また就業規則に定めがなければ懲戒解雇はできないとされています。どちらも無用な争いの種になりえます。

作成しないほうがリスク大

就業規則を作成していようがいまいが、法令(労働基準法など)の遵守義務は変わりません。
そして仮に労働者が年次有給休暇を申請してこないとしても、現在は会社等の規模にかかわらず、要件を満たす労働者に5日の有給休暇を取得させる義務があります。知らせないままでいれば(申請さえなければ)問題なしではありません。

ということは、作成一択ではないでしょうか。

ただし書やバスケット条項も使える

全員に画一的な対応など考えられない、という場合は、その条文の最後などに、例外的な取扱いをすることもある旨をただし書で記載しておけば問題ないと思われます。
また、該当事由を挙げていく場合に漏れなく書くことは難しいものですが、事由の最後の号として「その他前各号に準ずる○○な事由」などと記載しておけば、いわゆるバスケット条項として同レベルの事由にすべて対応できます。

悩んだら社労士等へ相談

過去にとりあえず作成した就業規則であっても、一度届出したものを変更するならそれなりの手続きが必要です。また、これまでなかったが作成するという場合には、厚生労働省のモデル就業規則を参考にするとしても、法令は守りつつ、自社等に合ったㇾベルの内容にアレンジすべきです。
法改正が反映されているか、多様な働き方に対応しているかなども要チェック事項です。
自力ではちょっと難しい・・と思ったら、社労士等へ相談するとよいでしょう。


コメント

このブログの人気の投稿

就労調整のツボ 12月2024-社労士-

フリーランスの労災保険 11月2024-社労士-

個人事業者の納税スケジュール 10月2024-税理士-